よく冷えた…

暑い日だった。

家に帰ってきて冷蔵庫を開けると、中には缶の飲料らしきものが1本だけ残っている。

引っ張り出してよく見てみたが……よく分からない。見たこともないデザインに、見たこともない文字が踊っている。どこの国の飲み物かも分からない。言えるのは、確実に日本のものではないということだ。

が、他に飲み物もなかったし、生ぬるい水道水を飲む位ならこれでいいかと、覚悟を決めて飲むことにした。

今時はもう見ることもなくなったプルタブを引っ張って開け、口に当てると一気に……

「……あれ?」

中身が出てこなかった。というか、空だ。

ただ、缶コーヒーを薬品臭くしたような香りのみ、ほのかに鼻で感じた。

よく冷えた缶をテーブルに置き、首を捻る。

家族の誰かのイタズラだろうか?

その日の夜、帰ってきた家族皆に聞いたが、そんな飲み物は知らないと言われた。

残っていた缶を見せようとしたが、何故か探してもどこにもない。燃えないゴミの袋に入れたはずだが、消えていた。缶も、外したプルタブも。

もしかしたら、中身が入っていなくて良かったのかもしれない。