山神様の煙

東北のとある田舎の田園地帯に、ぽっこりと盛り上がった丘がある。

広大な平地に広がる田んぼの真ん中に島のようにしてあるその小山は、古い時代の古墳なのだという。

周囲は自転車で10分ほど走れば回れてしまう程で、古墳自体それほど大きくもなく、歴史的な価値も特に秀でたものがないようで、発掘調査等が行われたこともない。

丘全体には杉が植えられており、古墳と言われなければ、ただの小さな杉林といった見た目である。

頂上のあたりだけ、ちょっとした広場のようなスペースがあり、小さなお社が建っているのだが、何が祀られているのかは分からない。ただ、地元の住民たちはその社を含む丘を「山神様」と呼んでいた。

その山神様の頂上付近から、薄い煙のようなものが立ち昇ることがある。

日にちや季節などに法則性は見られないが、大概は朝の早い時間の事である。

丘から離れすぎるとはっきり分かることがなく、近すぎても判然としない。大体丘全体を見渡せるくらいの距離、1kmくらい離れた地点からだと、一番はっきりとよく見えるという。

はっきり、とはいっても、それは本当に薄い煙のような雲のような細い1本の筋が見える、という程のものでしかなく、頼りなく丘の頂上付近からゆらゆらと立ち昇る様子を見ることができるだけ、なのだそうだ。

そして、煙、と言ったが、本当にそれが煙なのかどうかすら分かっていない。

見えてからすぐに社のある丘の頂上まで行っても、どこにも火を焚いた跡や煙を出したような痕跡すら発見できないのである。だから、煙や雲のように見えるそれが本当はなんなのか、正体を知っているものは誰もいないのだ。

ただ、その煙のようなものが立ち上った後数日は、たいてい良い天気の日が続くと言われている。

なんだかわからないが、とにかくそういうものである。

かの土地の住人達は、そのように受け入れている。

もうずっと、昔から。