失せ物

中学校時代、自分の部屋の机に座って勉強していると、時々手を動かしたはずみで、シャーペンや消しゴムを床に落とした。

カシャン、とか、コトンとか、床に落ちて音を立てたそれらは、当たり前だが、落ちた所にある。転がったりするものもあるが、そんなに遠くにはいかないだろう。

が、たまに、本当にたまにだが、確実に床に落として、その音も聞いているというのに、いくら探しても見つからないことがあった。

そんなものはたいてい、幾日かすると、部屋の床の上や机の上にぽつんと落ちているのを発見するのだが、何度か朝起きたら枕の横にあった事がある。

さらに変わった事を言うなら……学校の机の上から落として見つからなかった消しゴムが、数日後、自宅の自分の部屋の机の下に落ちているのを見つけたこともあった。

その時はいくらなんでもこれはおかしいと思って少々怖くなったが、落ち着いて考えてみるとなくしたと思ったものが出てきたのだから、困った事ではない。むしろ良かったとすら言えるだろう。まあ、納得はできなかったが。

そんな事が、中学時代はたびたびあった。

高校に入ると、一転してそんな事は起こらなくなり、落としたものは普通に落とした場所からみつかるようになった。ごく普通に。

もしかしたら、中学時代の自分はある種の超能力を持っていたのだろうか。

机から落としたものを、稀にどこか他の場所に時間差で飛ばす能力。

……全然便利でもなんでもない。

今はもちろん、そんな事はまったく起きないし、起きて欲しいとも思わない。

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