目が覚めると

狭山さん(仮名)は、すごく寝付きが良い。

さあ寝ようと布団に入って目を閉じた瞬間にはもう寝ている、というのが普通なのだそうだ。

毎晩なかなか眠れなくて悩んでいるような人にとっては羨ましい限りだが、そんな狭山さんにも睡眠に関しての悩みがあるという。

それは、寝付きが良すぎて寝ていないような気がする時がある、というものだ。

具体的に言うと、目を閉じた、と思った次の瞬間に目を開けるともう朝で、自分にしてみれば、瞬きしただけ、という感覚しかない。そんな時は全然寝た気がせず、損をしたような気がするそうだ。

こんな事もあった。

目を閉じて、開けたら朝。ここまではいい。

が、その時は何故か布団から体を起こしてみたら、寝間着から既に普段着に着替えていた。狭山さんには、着替えた記憶すらないのに、だ。

それだけでなく、居間のテーブルに行くと、コーヒーとトーストが用意されていた。どちらも出来立てで、コーヒからは湯気も立っていた。

狭山さんは一人暮らしである。朝食を用意していくれるような相手もいない。

自分しかいないのだから自分が用意したとしか思えない。ただ、記憶がない。本当に自分がやったのだろうか? わからない。

とりあえずトーストもコーヒーも完食した。美味しかったそうだ。

今も相変わらず、狭山さんは寝付きが良い。