迷う

柏原さん(仮名)は、毎年お盆になると帰省のついでに実家の墓に墓参りに行く。

墓地は小高い丘の上半分が全て墓地になっているような場所であり、かなり広い。少なくとも数百、もしかしたら千に届こうかというくらいの墓があるかと思われる程だ。

駐車場に車を止め、そこから家族で連れ立って自分の家の墓まで歩いていくわけだが、柏原さんは何年かに一度くらいの割合で、墓までの道で迷うという。

毎年行っているのだから、駐車場から墓までの道は理解している。なのに辿り着けないのだ。記憶の通りに歩いているのに、気がつくと全然別の場所にいたりする。自分だけでなく、家族の皆も首を捻るので、自分だけの勘違いとは思いづらい。

が、いつまでも迷って堂々巡りを続けるのかというとそうではなく、たいてい20分も歩いているうちに、ひょっこり墓にたどり着く。普通に歩けば駐車場から歩いて5分だ。まっすぐ一本道ではないが、せいぜい角を2,3度曲がるくらい。まず通常なら迷うことなど考えられない。なのに迷う。

原因はわからない。わからないのだが、柏原さんには心当たりがあった。

10年程前、墓に加わった祖父は、イタズラ好きだった。柏原さん達家族にしょーもないイタズラをしてはニヤリと笑う、そんな人だった。

仕掛けられた側が怒るような、嫌な気持ちになるようなものでは決してなく、苦笑しておしまいになるような、しょうがないなーの一言で済ませられる程度のもので、柏原さん達家族も、それにすっかり慣れていた。

その祖父が亡くなり、墓の住人に加わってから、何年かに一度、墓までの道を変に迷うようになった。

柏原さん達家族は、迷っても、しょうがないなぁ、で済ませている。

それもまた、ひとつの供養なのかもしれない。