雲を追う

小学校の頃、夏の暑い日の事だ。

学校帰りに、友人達と歩いていた。

最初に気づいたのは、誰だったろうか。

「なんだあれ?」

一人が、空を指さした。

青い空、遠くに見える入道雲。

そして、我々の前方の空中にも、白いものが浮かんでいた。

たぶん雲……だとは思う。白くてふわふわした、まさに雲としかいいようのないものだ。

ただし、かなり小さい。子供でも両手を広げたら抱えられそうなくらい、おそらくは直径1メートル程の、ややいびつな球形であり、しかも、かなり低い位置にそれは浮かんでいた。思い切りジャンプすれば、手が届くのでは、と皆は思ったろう。少なくとも、自分はそう感じた。

一緒にいた皆が、その雲めがけて走り出す。もちろん自分も、だ。

そろそろ稲の穂が出始めた、青々とした田んぼの真ん中を通る一本道。

そこに現れた、小さな雲。

一番足の速かった奴が助走をつけて飛び上がり、手を伸ばして触ろうとした。

が、なんと、白い塊がそれを避けるようにすっと横に動く。

寄ってたかって、次々にそこにいた全員で追いかけ回したが、縦横斜め、時には上昇したりして、雲はことごとくを避けた。

が、それでいて離れるでもなく、頑張れば触れそうな位置でふわりふわりと漂い続ける白い雲。

後になって思い出してみると、それは逆に、こちらが遊ばれているような動きだった。

随分長いこと追いかけっこが続いたような気もするが、時間にすればほんの10分程だったろう。

小さな雲は、ふと上空に上りはじめ、ぐんぐん小さくなっていった。

捕まえるどころか触れることすらできなかった我々は、悔しさを噛み締めつつ、見えなくなるまで見送るだけだ。

最後には、誰からともなく手を振って、次は絶対触ってやる、と再戦を誓うのだった。

だが、その機会は今の所まだ訪れてはいない。