高層の闖入者

某地方都市にある高層マンションで、ある時とある問題が起こった。

小さな侵入者──アリが出たのだ。

アリと言っても、白アリではない。大きさは数ミリ程度の黒いアリだ。それらが部屋に出没したのである。

問題だったのは、それが一部屋ではなく、いくつもの部屋に渡って出没した事、しかも10階以上の部屋に限って、という点だった。

利用者からの報告を受けた管理会社はすぐに調査を開始したが、かなり難航したそうだ。

少なくとも10部屋以上でアリは確認されており、いずれも数匹単位でまとまって動いていたところを住民によって駆除されていた。そういった事は判明したのだが、そのアリの侵入経路がまるで分からなかったのだ。

何しろ高層マンションである。当たり前だが鉄筋コンクリート造だ。築年数も浅く、それこそアリの入る隙間などない。

マンションはペット禁止であったし、そもそもアリを飼っているような家庭もなかった。

後は外から何者かが持ち込んだ可能性だが、入居者以外は全てエントランスで入居者、あるいは常駐している管理者の許可を得ないと内部に入れないシステムになっていたし、届け物は宅配ボックスが完備されており、大体のものはそちらに入るようになっている。それらのセキュリティをくぐり抜けて内部にアリを持ち込むのは難しいと思われたし、第一何者かがアリをマンション内に放ったとして、その理由が不明だ。

既にマンション内に巣が作られているという可能性も考えられたので、駆除業者も加わってさらに詳しい調査が続けられる事になった。

どこから、どうやって侵入したのか、まだいるのか、いるとしたらどれほどか。

……結果として、それらは何一つとして判明しなかったそうだ。

三ヶ月ほどすると、アリの姿を見かける事はなくなり、原因はうやむやのまま、そのまま自然消滅、という事になった。

もちろん、そのマンションは今もある。