自転車のカゴに…

ある日の朝、梅本さん(仮名)が自宅から自転車で出ようとすると、前カゴに何か入っているのに気がついた。

見たこともない、外国製のお菓子がひとつ。

パッケージに描いてある絵からすると、おそらくチョコ菓子なのだろう。未開封だったが、もちろん自分が入れたものではない。

さすがに食べる気も起きなかったので、駅のゴミ箱に捨てた。

……次の日の朝も、同じく自転車の前かごに似たようなお菓子がひとつ、入っていた。

左右を見渡す。誰もいない。当たり前だ。自宅の庭なのだから。

家の前の道路に出ても、人影はなかった。

誰が入れたのだろう? イタズラなのだろうが、連日となると流石にちょっと怖い。

時間もなかったので、その日もとりあえず出て、駅のゴミ箱にお菓子は捨てた。

……3日目。その日もやっぱり、自転車の前かごにお菓子は入っていた。

その日も駅で捨てて、帰ってきてから家族に相談する。

もしかしたらストーカーかもしれない。だが犯人もわからず、相手の意図も不明とあっては、警察に行っても相手にされないだろう。

対策として、カメラを持ったお父さんが早起きして物陰から自転車を見張ることにした。犯人を写真に収めようという魂胆だ。

だが、それは上手く行かなかった。

早朝、まだ薄明の頃にお父さんが自転車を見ると、既にお菓子が入っていたのである。

どうやら犯人は、夜のうちに行動を起こしているようだ。

まさかずっと一晩中見張るわけにもいかず、ビデオカメラでも仕掛けてみるか、とか話し合った翌日、事態が変化した。

自転車の前かごに入っていたのは、お菓子ではなく、1枚のメモだった。

「すみません、間違えました」

ただ、それだけが書かれていた。

……何をどう間違えたというのか。

さっぱり分からないまま、翌日から自転車の前かごには、何も入れられることはなかったそうだ。