話し声

飲み会からの帰り道、国道沿いの道を1人歩いていた。

火照った顔に当たる涼しい夜風が心地良い。

夜遅く、深夜と言ってもいい時間であり、人通りも殆どなかった。

あと10分も歩けば自宅、という所で、コンビニの前を通りかかる。

そのとき、

「ダメだね」

そんな声が、聞こえた。

「ああ、ダメだね」

「ダメだダメだ」

「あはは」

「うふふ」

性別は分からないが、どことなく幼い、子供みたいな声だ。

さほど大きな声でもないのに、酔っぱらいの耳にもすうっと入ってくる、不思議な響きを持っていた。

立ち止まり、あたりを見回す。声の方向もよくわからない。

自分の他に、人はいなかった。

ただ、コンビニの駐車場の端に立っている大きな看板の下に、猫が2匹いた。並んで座っている姿が見えている。看板を照らしている照明はあるが、下の方までは明かりがあまり届いていなかった。なので、こちらを見ている目だけがキラリと光っている。ごく普通のトラ猫と白猫のようだ。

……まさかとは思うが、今の声はこいつらなのだろうか。

じっと見ていたら、猫達はふいっと顔を反らし、暗闇の中に歩いて行ってしまった。

声は、もう聞こえない。

少し、お酒は控えたほうが良いなと思った。