ゴツン

かつて通っていた高校の階段が、ちょっとおかしかった。

最初は入学してすぐの1年生の時。

友人と歩いていて、校舎の中央にある階段を1階から2階に向かって登っている時だった。

いきなり、ガツン、と頭に衝撃が来て、思わずその場にうずくまる。

何か硬いものが、おでこのやや上のあたりにぶつかったのだ。

どうした? と友人に聞かれたが、自分でも分からない。

なにかにぶつかったのは確かなのだが、いきなりとはいえ、当たったのはおでこだ。そこに何かあったにしろ、何かが前から飛んできたにしろ、正面の目の前なのだから、見えないはずがない。

なのに、衝撃を感じる瞬間も、その前も後にも、何も見えなかった。感じすらしなかった。

友人に聞いても、特に何か飛んできたようなものはないという。

立ち上がり、ぶつかったあたりを見て、手で触れてみたりもしたが、やっぱり何もなかった。手は単に空気をかき回しただけだ。感触も違和感も何もない。

なんだかわからなかったが、その時はとにかく何かに当たったんだろう、とだけ思って、それで済ませた。ズキズキする頭を擦りながら。

……そんな事があった、という記憶も薄れ始めていた3ヶ月くらい後、同じ階段を、今度は1人で下っている時に、また頭にガツン、と来た。

その時もやっぱり、何も見えず、何も触れず、何もなかった。頭に感じた衝撃と痛みだけが、事実として残るだけ。

それからは、その階段を意識的に通らないようにした。

結果として、自分はもう見えない何かにぶつかることはなかったが、自分が在学中、少なくとも3人が、その階段から転げ落ちて怪我をしている。

いずれも、クラスも学年も違う奴だったので話も聞いていないが、たぶんそいつらも見えず、感じない何かにぶつかったのではないかと思っている。